回答一覧 - 高度医療(体外受精・顕微授精・ギフト他) No.6 -
 採卵はできますが、いつも変性卵といわれて、受精もなかなかうまくいきません。FSHの値が悪いということですが、そのせいなのでしょうか?FSHの値は、どれくらいの値なら、正常範囲でしょうか?

 FSHの単位は、限界値は15mIU/mlとよくいわれていますが、値のもつ意味は年齢で大きく変わってきます。年齢によって、FSHの値は高くなりますので、40歳未満で正常な排卵周期を持つ方の場合には、多少高くても悲観することはないと思います。
(院長:田中温)
 採卵後、戻しのときに一緒になった方たちのお話を聞くと、同じ日数たっている方でも、卵の分割速度がまちまちのようです。他の方たちと比べ、いつも自分の分割の速度と様子が気になって仕方ありません。順調な分割の速度の目安というのは、どのようなものでしょうか?また、それより遅い場合に戻しても、妊娠の可能性はあるのでしょうか?

 順調な分割は、採卵2日目で4-6細胞、3日目で8-16細胞、4日目で桑実胚(16-32細胞)、5日目で胚盤胞となります。これが、1日ずつずれた場合には、胚の発育スピードが遅いと判断していいと思います。スピードが遅い場合には、着床率が低下しますが、着床する可能性がまったくないというわけではありません。8細胞までは、胚の発生能力は卵子の中にある母親由来の能力で補われます。8細胞以降からは、胎児自身の力で発育を始めます。ですから、この8細胞前後での発育のスピードが低下する場合では、着床率が低いと考えていいと思います。
(院長:田中温)
 お酒が大好きです。体外受精(IVF)をしています。先日戻しをしたのですが、その結果が不安で、ストレスを紛らわしたくて、ついアルコールを口にしてしまいます。結果が出るまでの間、アルコールを飲んでも、着床に影響はないのでしょうか?

 アルコールと着床率には因果関係がありませんので大丈夫です。但し、過度にならないようにされて下さい。
(院長:田中温)
 採卵後すぐに移植せずに、受精卵を凍結して、自然の周期に戻すと妊娠率が高くなると聞きます。でも、受精卵を凍結して解凍したときに、受精卵が壊れてダメになるということはないのでしょうか?

 凍結胚移植は、まちがいなく妊娠率が高くなります。しかし、これは、完全な凍結技術があるという前提です。凍結技術は、術者の腕によって、かなり差が出てきますので、凍結胚をされた場合には、その点について、担当医師に十分に聞かれたほうがいいと思います。けして、簡単な技術ではありません。技術が不十分な場合には、胚はほとんどダメになってしまいます。
 凍結技術が高い施設では、凍結を積極的に勧めます。一方、技術力が不十分な施設では消極的となります。両者の違いで、各施設の凍結の字鬱積がわかると思います。
(院長:田中温)
 カウフマン療法をしました。薬を終了しても、なかなか生理が来ないのですが、どうしたのでしょうか?カウフマン療法で生理が止まることはありますか?

 カウフマン療法後、月経が来ないということは、一般的にはありません。卵巣の機能自体に問題があるのではないでしょうか?一度詳しいホルモン検査をされることをお勧めします。
 但し、ホルモン剤使用後の月経の量はかなり減少することがよくあります。実際は月経が始まっていたのに見逃していることもありますので、十分に注意されて下さい。
(院長:田中温)
 治療を重ねるうちに、高齢になってしまいました。いつも普通の体外受精(IVF)だったのに、最近、顕微授精(ICSI)に変わっていました。これは、卵の質が下がったとか、精子の状態が悪いとか、なにか原因があったからでしょうか?

 高齢の場合の受精率はあきらかに低下しています。これは卵子側に原因があります。透明帯、もしくは、卵細胞質の問題だと思います。顕微授精(ICSI)をしたほうが、まちがいなく受精率が高くなります。 顕微授精(ICSI)の技術の差は大きく、妊娠率に影響を与えます。特に高齢の方の卵を用いた顕微授精(ICSI)は、高度な技術が必要です。
(院長:田中温)
 不妊治療をしています。なかなか妊娠できないので、そろそろ高度医療を考えたほうがいいのかと悩んでいます。体外受精(IVF)へのステップアップのタイミングは、いつぐらいでしょうか?

 月経の始まる前に来院されて、主治医に体外受精にはいることをお伝えください。GnRHアナログ、スプレキュアなどの開始を黄体期の中期から始めることもありますので、できれば、排卵直後、もしくは排卵前に受診された方が、直ちに治療にはいれるので有利だと思います。
 最近は、排卵誘発前の1ヶ月間、ホルモン剤を服用し、良好な卵子の発育を期待する方法が着目されております。もし、この方法をご希望される場合は、採卵周期の2ヶ月前の月経が始まるまでに来院されるといいでしょう。
(院長:田中温)
 子宮内膜症と診断されています。体外受精(IVF)をしても、卵子の数が少なく、回数を重ねてもいい結果がでません。子宮内膜症だと、妊娠しにくいといわれますが、子供を持つことは、これから可能なのでしょうか?

 子宮内膜症が進行してきますと、発育する卵子の数が少なくなります。また、腺筋症などで子宮の壁が厚くなった場合には、内腔を圧迫し、内膜が薄くなる場合があります。この場合は、あきらかに妊娠率がさがります。しかしながら、卵子の質自体には影響がありませんので、決して諦めることはありません。内膜症にあった排卵誘発剤を使い、数が少なくとも、質の高い卵子をとるようにすれば、十分チャンスがあると思います。
(院長:田中温)
 体外受精で戻した後(IVF-ET後)に薬を処方されました。ホルモン補充の薬のようですが、妊娠反応が出ても飲み続けるように指示されました。ホルモン剤は妊娠中にはよくないと聞くので、調べてみたところ、妊娠中は服用してはいけない薬と記されていました。それなのに、この薬を飲み続けていいのでしょうか。

 胚移植後に使用する薬のほとんどが黄体ホルモンまたは卵胞ホルモンです。これらの薬は、妊婦には投与を注意するようにとのただし書きがあります。それは、血栓形成および胎児の奇形に対するリスクが高くなるからです。しかし、現在まで、体外受精での胚移植後に使ったホルモン剤が原因で、異常事態が高くなったという報告はありません。但し、服用期間は極力短くすべきでしょう。
(院長:田中温)
 通院して、卵胞チェックをしてもらっています。卵胞は育っていますが、ぜんぜん排卵しません。どうしたら排卵するようになるでしょうか。

 尿中のLHが陽性となり、排卵予定日の翌日には血中の黄体ホルモンが上昇し、明らかに排卵したことを証明する所見があっても、実際には超音波上排卵していないことは珍しくありません。このような状態を黄体化未破裂卵胞といいます。基礎体温は二相性となりますが、排卵していませんので妊娠にはいたりません。ほとんどの方が、単発・散発的なもので、繰り返すことはありません。しかし、卵巣周囲の癒着(開腹手術や子宮内膜症)などが既往としてある方には、頻発してあることがあります。このような場合には、クロミッド周期からHMG周期にして、発育する卵胞の数を増やせば排卵する卵が増えてきます。HMG注射後も排卵しない場合には、腹腔鏡検査でおなかの中を詳しく調べることをお勧めします。
(院長:田中温)
 子宮内膜が薄く、なかなか厚くなりません。ホルモン補充周期でもダメです。バイアグラを使うと厚くなる・・という話を聞きましたが本当でしょうか?

 バイアグラが子宮内膜を厚くする上で有効であるという報告は、以前ありましたが、現在では、あまり効果がないというのが一般的な考えです。バイアグラで血行がよくなると考えられることが、このお薬を使う理由ですが、子宮内膜の厚さをコントロールしている要素は、血流だけではなく、各種ホルモンや体質も関係しているようで、一筋縄ではいきません。
(院長:田中温)
 妊娠すると、基礎体温がいつもよりあがって、安定するとよく聞きます。体外受精で戻した後(IVF-ET後)、黄体ホルモンの補充をしているのですが、基礎体温が37℃以上になりません。これは、着床しなかったということなんでしょうか?

 基礎体温は、人によって、その基礎値が異なります。体温の基礎値が低い方は、低温層が基礎体温表より下にはみ出してしまうかもしれませんし、高い方は高温層がふりきれてしまうこともあります。大事なことは、低温層と高温層との差が0.3-0.5℃以上あることです。
 体外受精後、黄体ホルモンの補充に関しては様々な考え方がありますが、まずは、子宮の内膜の厚さと内部エコーが、木の葉状から均一状になるのが確認されたかどうかと、内膜が薄くなってはいないかどうか(本来は少しずつ徐々に厚くなる)を観察することが必要です。また、血中のプロゲステロンの値を測ることが最も正確な検査です。排卵後は、その値が5ng/ml以上となり、着床期には10ng/mlを越え、20ng/ml以上となることが必要です。黄体ホルモンの補充は、このような検査をしながら、ひとりひとりにあわせて行います。ですから、基礎体温が37℃以上になるかならないかは着床の有無とは関係ありません。二相性になるかどうかが問題です。
(院長:田中温)
 今度、初めて体外受精(IVF)治療を受けます。仕事をしているため、休みをあらかじめ申請しなければいけません。刺激周期の場合と自然周期の場合とでは治療スケジュールが変わってくるのでしょうか?採卵は、だいたい月経周期何日目ぐらいになるのでしょうか?

 個人差がありますが、大体、アゴニストやアンタゴニストを使う場合には、月経周期12-14日の間が採卵になると思います。人工授精を行う日が採卵日となると考えていいでしょう。
(院長:田中温)
 タイミングや人工授精を何回も試しましたがダメでした。そろそろ体外受精(IVF)にステップアップしなければいけないと思っています。多くの病院が、IVFを行っているようですが、病院の技術などによって、成功率も変わってくるのでしょうか?よい病院選びのポイントを教えてください。

 体外受精を行っている施設は、日本で600箇所以上あると言われており、どの病院を選ぶかは、患者さんにとっては、難しいかもしれません。ポイントとしては、様々なことが考えられますが、まず、年間の症例数と妊娠率を公開しているか、また、日曜日・祝日のモニターや注射を行っているかどうか、排卵誘発に伴う副作用(卵巣過剰症候群、流産、子宮外妊娠、採卵後の出血)などに対し、24時間対応できる体制であるかどうかといったところでしょう。また、なかなかうまくいかない場合の説明を十分にしてもらえるか、メンタル面のサポートも可能かという点も重要です。また、医師との相性もありますので、あなたにとって、信頼できる医師であるかどうかということを確認されることが大事です。
(院長:田中温)
 最近、アンタゴニストを使って知人が妊娠しました。卵の質が良くなったと聞きましたが、私はもともと採卵数が少ないため、もっと卵子が少なくなる可能性があり、また、人によっては、必ずしも質が向上するわけではないと聞いて、使用を迷っています。試してみる価値はありますか?

 アンタゴニストは、もっとも新しい排卵誘発法です。アゴニストよりもLHとFSHの分泌を強力に抑制するために、内分泌環境を自由に操ることが可能となり、その結果、良質の卵子の発育が容易になります。しかしながら、その作用の強さにより、発育する卵胞の数はアゴニストよりも減少してしまうのが現状です。しかし、私たちの経験では、十分に注意深くモニターを行い、HCGのタイミングを間違わなければ、アンタゴニストでも十分良質な卵子を採取することが可能です。また、卵巣の腫れやすい方には、アンタゴニストが最も適した方法だと考えます。ですから、あなたの卵巣の反応によっては、非常に効果がある試す価値のあるものだと思います。
 一方、アンタゴニストを使うことにより、アゴニストより質が落ちることもあります。原因としては、効果が強すぎて、LHとFSHの濃度を下げすぎてしまうことにあるようです。過排卵処理中の卵胞発育のスピードを目安に、注意してモニターすることが必要です。
(院長:田中温)
 体外受精(IVF)の採卵は、卵胞が何mmぐらいのサイズのときがいいのでしょうか?大きすぎても、小さすぎてもいけないと聞いたのですが、最適な大きさを教えてください。

 採卵のタイミングは、施設によってかなりの差があるようです。欧米では16-19mmでHCGに切り替えるとよく書いてありますが、私たちの経験では、16-19mmでは小さすぎて、採取した卵の質がかなり低下します。
 また、排卵誘発法によっても異なります。GnRHアナログ、スプレキュア、ナサニールなどを使っている場合には、20-22mmぐらいがいいサイズだと思います。一方、アンタゴニストを使っている場合には、22-24mmと少し大きめのほうが、質のよい卵が採れるということが経験的にわかっております。
 また、クロミフェンだけの周期またはクロミフェンプラスHCGだけの周期の場合は、自然排卵というリスクがありますので、20mmでHCGに切り替えたほうがいいでしょう。20mm以上になった場合は、20-30%の確率で自然排卵が起こりますので注意が必要です。
(院長:田中温)
 排卵誘発の注射の最中に、基礎体温が高くなってしまいました。体外受精(IVF)治療を中止した方がいいといわれましたが、せっかくここまで注射を打ったのに・・とためらっています。指示通り、今回はキャンセルした方がよいでしょうか?また、注射を途中でやめても卵巣に悪い影響はないのでしょうか?

 排卵誘発中に基礎体温があがることはよくあります。しかし、超音波でモニターをして、卵胞の発育が順調であるならば、やめる必要はありません。本来、基礎体温はそれほど正確な検査ではありませんので、二相性になるかどうかを見るだけの指標とお考えになっていいと思います。ただし、途中で卵胞が消失したり、卵胞の内部のエコーが変化して黄体化したと思われるような場合は、黄体ホルモンが早期に分泌され、基礎体温が上がってしまいます。その結果、卵子の成熟度が極端に下がり、いい卵がとれません。こういう場合には、中止したほうが良いと思います。
(院長:田中温)
 採卵はできたのですが、卵が受精しませんでした。受精しない理由として、どういうことが挙げられますか?

 体外受精で受精しない場合には、大きく分けて2通りの原因があります。
 ひとつは、精子に受精能力がない場合です。精子の数が極端に少ない場合や運動率が低下している場合がこれにあてはまります。
 もうひとつは、精子には問題が認められないけれど、卵子が精子を受け入れなかった場合です。ほとんどは、透明帯に問題があるといわれています。しかし、肉眼的に透明帯が精子を受け入れるかどうかを判断するのは難しい場合があります。明らかに透明帯が厚い場合や、茶色に変色している場合には、透明帯通過障害があると思います。また、透明帯は正常に見えても、卵細胞質がしわしわだったり、少し茶色っぽくみえる卵子では、受精率が下がります。
 また、卵がたくさん(20個以上)採れた場合も、肉眼的に良好な卵子に見えても、受精率が低下してくることがよくあります。このような症例に応じて、体外受精にするか、または顕微授精にするか決めることは重要だと思います。
(院長:田中温)
 不妊治療中の病院で、採卵をしましたが、全部が空胞で、エンプティフォリクル症候群と診断されました。これは、どういう病気なのでしょうか?手のうちようがないといわれましたが、治療方法はないのでしょうか?

 エンプティフォリクル症候群には、内容が2通りあります。
 ひとつは、もともとからっぽの卵胞の場合です。そのほとんどは、排卵時期にある程度大きく育っていた卵巣嚢腫が原因だと思います。
もうひとつは、卵子が卵胞内で発育して、途中で黄体化などの障害により、卵子の発育がストップしてしまい、退行してしまった場合です。この場合には、卵子の形がほとんどなくなりますので、採卵できません。
 エンプティフォリクルを繰り返す方には、排卵誘発法をもう一度考え直し、もっとも適した排卵誘発を見つけることが重要です。また、排卵前には、必ず両側卵巣をチェックし、すでに大きくなっている卵胞があれば、それがどの位置にあるかを観察しておけば、新しく発生してきた卵胞との区別ができますので、エンプティフォリクルということはないと思います
(院長:田中温)
 排卵誘発の注射をしていますが、ヒュメゴンとかフェルチノームとか、幾つか種類があるようです。どのような成分の違いがあるのか、また、どのような場合にどの薬が適応になるのか、教えてください。

 排卵誘発剤の注射は、大きく分けて2通りあります。ひとつはHMG製剤(ヒュメゴン・パーゴグリーン・日研・ゴナトリールなど)、もうひとつはFSHです。
 HMGは尿の中から抽出するホルモンですが、抽出過程でFSHとLHが含まれてしまいます。このHMGから、LHを除去して、FSHのみにしたものをFSH製剤といいます。理論的には、LHは排卵直前にしか上昇しませんので、排卵誘発の過程では、LHが入っていない方が有利なはずです。そういう意味で、HMGよりFSH製剤の方が質の高い卵ができると考えられております。実際に行ってみますと、症例によってはフェルチノーム(最近では遺伝子組み換えのフォリスチムというものがあります)の方が質の高い卵子が取れる確率が高くなる場合もあります。しかしながら、一般的には、あまり差はありません。また、GnRHアゴニストやアンタゴニストを併用することにより、LHが下がりすぎてしまい、かえって卵の質が悪くなってしまうこともありますので、排卵誘発の後半部分でLH(またはHCG)を投与することも最近注目されています。
 HMGの方が費用が50%ほど安くなりますので、経済的な負担を考えますと、それほど差が出ない症例の方の場合には、FSH(フェルチノーム)を使うことはないと思います。しかし、卵巣の反応が過剰なPCOSのような場合には、LHに反応しやすい状態ですので、ピュアなフェルチノーム、FSHの方がよいでしょう。
 最近は、「良質な卵子を作るためには最適な排卵誘発を行うべきである」という観点に立つならば、FSH製剤を使った方が、多少妊娠率があがるのではないかと期待しています。
(院長:田中温)
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